滋賀県がん患者連絡協議会

 平成28年度 がん患者力・家族力向上事業

パネルディスカッション

第I部 パネルディスカッション ~イントロダクション~


それでは第1部のパネルディスカッション「緩和ケアってなあに?」に移らせていただきます。菊井さん、八木さん、よろしくお願い致します。

何回も登壇して、本当失礼いたします。
これからパネルディスカッション「緩和ケアってなあに?」を始めます。
この座長をつとめさせていただくのはがん患者の二人で、私、菊井と八木がつとめます。
後で自己紹介します。ではよろしくお願い致します。

患者から見た心の緩和ケア ~5つの扉~

ある日、「がんかもしれない」と思った。けれど怖くて病院に行けなかった。勇気を出して、病院に行った。「よく覚悟して来たね。もう大丈夫だから。」主治医の言葉に涙があふれた。この主治医の言葉が、緩和ケアのはじまりだった。
緩和ケアは、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、宗教的霊的苦痛を和らげるとされています。今日は患者から見た心の緩和ケアについて考えていきましょう。
がん患者は5つの扉を開けて歩んでいきます。一つずつ開けてみましょう。

『告知』

主治医からがんだと告げられました。「先生、本当なんですか?私、本当にがんなんですか?がんだったら、私、もう死んじゃうんですか?」先生、診察室で何て言ったんだろう。悪性度って何?ステージって何だろう?告知された時は頭が真っ白になって、先生と何を話したか覚えていない。自分が置かれている状況が理解できない。そんな患者さんが多いと思います。
実際の患者さんに聞いてみましょう。

  • がんと診断された後の、心の準備や整理ができるように納得できる説明をしてほしいと思った。
  • 自分が後悔しない医師の選択をしたい。この先生に命を預けられるだろうかと考えました。
  • 手術を勧められたが、仕事を続けられるか不安だった。仕事と両立できる治療法を示してほしかった。
  • 「先生の家族にもこの治療法を勧めますか?」と聞きながら、治療法を選択しています。

また、違う扉を開けてみましょう。

『がんになった自分と向き合う』

退院し自宅に戻ったが、思い悩んでしまいます。「このまま治療すれば治るのかな?」「抗がん剤の副作用で体調が悪くならないだろうか?心配だな。」「再発や転移が不安だな、しないといいな。」
実際の患者さんに聞いてみましょう。
悩むことと考えることで、がんになった自分と向き合うことができると思いますよ。次の一歩を踏み出すことができると思いますよ。

また、違う扉を開けてみましょう。

『まわりとの関わり』
  • がんになって落ち込んだ気持ちを友達に打ち明けた時、励まされました。前向きになれました。
  • 他のがん患者さんはどうしているのだろう?どこか、会える場所はないかな?悩みを分かち合えないだろうか?

がん患者サロンというコミュニケーションの場があります。当会主催のがん患者サロンです。がん患者と家族が世話人を務め、運営しています。
サロンに参加された方のお話を伺いました。

  • がん患者サロンに来て、皆さんとお話すると元気がもらえます。元気が出るとまた来よう!という気になります。
  • サロンに行くことが楽しみで、生きる目標なのです。

当会主催のがん患者サロンでは参加者にアンケート調査を実施しています。アンケートにはどのような声が寄せられたのでしょうか?

  • 治療のこと、不安な気持ち、家族のこと、がんに関する様々なことを聞くことができて良かった。
  • 参加者の話を聞くうちに、自分の話をしたくなることがあります。思い切って話してみるとみんなが共感してくれました。胸のつかえがとれたようにすっきりした気持ちになりました。
  • 話を聞いて自分も話すうちに、元気が出て来ます。明日を生きる勇気が湧いてきます。

話が盛り上がると、参加者みんなで笑いあうこともあります。素敵な笑顔です。

家族との関わりはどうでしょうか?
入院や通院、治療の副作用で家族に迷惑をかけないかな?
治療費が高額になる。経済的に大丈夫かな?
家族との関係はどう変化したのでしょうか?

患者さんに伺ってみました。

  • 私ががんになったことを伝えたら、急に子供が頼もしく感じました。最近では、子どもに頼るのもありかと、考えが変わってきました。

がんになって、家族との関係がどう変わったのかを聞いてみました。

  • 家族みんなが、病状を気にかけてくれるようになりました。
  • 家族ががんになったことで健康について考える機会になり、体を気遣うようになりました。
  • やりたいことがあった時、家族がより理解を示してくれるようになりました。

医療者との関わりはどうでしょうか?
主治医と患者、という立場でのコミュニケーションが始まります。

  • がん治療は何年も続きます。自分の意志がちゃんと伝えられる主治医との関係が大切だと気付きました。

主治医がかけてくれたらうれしいと思う言葉をまとめました。

  • 一緒にがんばりましょう。
  • 一緒に考えていきましょう。
  • わからないことは、いつでも聞いてください。

寄り添ってくれる看護師の存在も患者さんにとって不可欠です。
がん相談支援センターはとても頼もしい存在です。
がんに関する様々な悩みに専門的に対応してくれます。

また、違う扉を開けてみましょう。

『新たな世界』

がんを経験したことで、新しい世界の広がりを実感します。

  • がんになってから見る桜は今までと違った。すごくきれいだった。
  • 愛犬との散歩が、こんなに楽しく感じられることはなかった。
  • がんになる前は日常だと思っていた当たり前が、かけがえのない日常だと分かった。
    そして、後悔しない生き方をしたい。やりたいことがあったら何でも挑戦したい。
  • たくさん励まされた。生きる強さを教えてもらった。
  • 次は私が誰かを元気にする番だ。私は新しい世界を今生きている。

最後の扉を開けてみましょう。

『希望』

今私たちはがん治療というトンネルの中にいます。
医療には限界があります。「最期まで診るから。」と伝えることしかできません。けれどその主治医の言葉にどれだけ励まされたことでしょう。
まだ、おぼつかない足だけれど、希望を胸に自分らしい人生を歩んでいきます。

インタビューやアンケートにご協力いただいた多くの皆さま、誠にありがとうございました。


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